最終更新日 2023.2.3
※本記事は、全5回の連載記事「暗号資産の税金と確定申告」のうち、第3回目「暗号資産の損益計算~移動平均法・総平均法とは~」です。
全5回にわたって、暗号資産取引にかかる税金と確定申告の方法をご紹介します。
記事は、暗号資産の損益計算サービス「Gtax」を提供する株式会社Aerial Partnersの藤村大生様にご寄稿いただきました。
記事を参考に、自分は確定申告をする必要があるのか、どのように申告すれば良いか、学びましょう。
第2回:暗号資産の確定申告の流れ
第3回:暗号資産の損益計算~移動平均法・総平均法とは~
第4回:暗号資産の損益計算が難しいと言われるのはなぜ?正しく計算を行う方法を紹介
第5回:いくらから申告が必要?暗号資産の税金に関するよくある質問
TOPICS
1) はじめに
2) 移動平均法と総平均法の違い
3) シンプルな取引での計算例
4) 移動平均法と総平均法を使った計算例
- 移動平均法の計算例
- 総平均法の計算例
5) 移動平均法と総平均法の特徴
6) 確定申告をするときに計算方法の届出を必ずしよう
7) まとめ
はじめに
暗号資産の取引で利益が出たときに行う確定申告の流れは、第2回目の記事でお伝えしましたが、利益の計算をミスなく行うためには「暗号資産を1枚あたりいくらで取得したのか?」といった平均単価(≒原価)を求めなければいけません。
そして、その平均単価の計算方法として「移動平均法」「総平均法」の2種類からいずれかを選ぶ必要があります。
第3回目では、移動平均法と総平均法の違いについて分かりやすくお伝えしていきます。
移動平均法と総平均法の違い
冒頭でもお伝えしましたが、利益の計算には暗号資産を1枚あたりいくらで取得したのか?という情報が必要になります。
この平均単価を求めるために用いられる方法が、移動平均法と総平均法の2種類です。
移動平均法と総平均法について
✔ 移動平均法
暗号資産を購入するたびに平均単価を算出する方法
✔ 総平均法
1年間に購入した金額の合計を数量の合計で割って平均単価を算出する方法
この説明だけでは、パッと見てもイマイチ分かりにくいでしょう。それでは図を用いながらそれぞれの計算方法についてお伝えしていきます。
シンプルな取引での計算例
移動平均法と総平均法についてお伝えする前に、一度シンプルな取引での計算例を紹介していきます。
例えば、ビットコイン(BTC)の購入と売却がそれぞれ1回ずつのケースではどのような計算になるのでしょうか。
購入と売却が1回ずつのケース
ビットコインが「1BTCあたり100万円」のときに3BTCを購入し、その後に「1BTCあたり150万円」になったタイミングで1BTCを売却した。
このケースでは、売却したときの価格(1BTC=150万円)と購入したときの価格(1BTC=100万円)の差額が利益となるので、50万円となります。
このような年間に一度しか取引をしていないケースでは、シンプルな引き算をするだけで求められるでしょう。しかし実際は複数回の取引を行う方が多いはずなので、これからご紹介する移動平均法と総平均法のいずれかを活用してください。
移動平均法と総平均法を使った計算例
先ほどのケースでは、ビットコインの取引回数が購入と売却それぞれ1回のみだったため、シンプルな計算で済みました。
では、ビットコインを2回以上購入したケースでは、どのようにして平均単価を求めるのでしょうか?
ビットコインを2回以上購入したケース
ビットコインを①〜④の流れで購入と売却をした。
① 時価100万円/BTCで1BTCを購入
② 時価150万円/BTCで1BTCを購入
③ 時価200万円/BTCで1BTCを売却
④ 時価275万円/BTCで1BTCを購入
このケースでは購入が3回で売却が1回のみです。
この場合、移動平均法と総平均法のどちらかを選択するわけですが、例として③の「1BTC=200万円で1BTCを売却」といった取引について原価がいくらになるのか移動平均法と総平均法の順番にみていきましょう。
移動平均法の計算例
まず移動平均法から試していきます。
移動平均法で計算するときは、暗号資産を購入するたびに平均単価を求めます。
③の単価を求めるために、②の購入までの平均単価を求めます。
[100万円(①の時価) + 150万円(②の時価)] ÷ 2BTC(① + ②の購入数量)
= 125万円
②の購入が完了した時点での1BTCあたりの原価(=平均単価)は125万円だとわかりました。③の売却で利益がどのようになるのか求めていきます。
200万円(③の売却価格) - [125万円(取得価額) × 1BTC(③の売却数量)]
= 75万円(利益額)
このように、移動平均法で計算すると75万円となります。
総平均法の計算例
続いて、総平均法で試していきましょう。
総平均法では、1年間(1月1日〜12月31日)に購入した金額の合計を1年間に購入した数量の合計で割って求めます。
つまりこのケースでは、①②④で行ったビットコインの購入合計金額525万円を購入した数量の合計3BTCで割って求められる175万円が平均単価となります。
[100万円(①の時価) + 150万円(②の時価) + 275万円(④の時価)] ÷ 3BTC(① + ② + ④の購入数量)
=175万円(平均単価)
1BTCあたりの原価(=平均単価)が175万円と求められたので、利益額を計算しましょう。
200万円(③の売却価格) - [175万円(平均単価) × 1BTC(③の売却数量)]
=25万円(利益額)
計算した結果、総平均法では利益額が25万円になりました。
この計算結果からもわかると思いますが、同じ取引内容でも移動平均法と総平均法のどちらを使うのかによって異なる計算結果が求められます。しかし、将来にわたる損益額(利益/損失)は一致します。
移動平均法と総平均法の特徴
移動平均法と総平均法にあるそれぞれの特徴を紹介します。
移動平均法
- 暗号資産を購入するたびに平均単価の計算をするため、計算が複雑になる(50回購入したら50回計算が必要)
- 体感に近い計算結果が得られる
- 年度中に損益計算ができて所得の見積もりや納税資金の用意がしやすい
総平均法
- 年度に何回取引をしても1回で単価を計算できるため、計算が比較的簡単
- 購入のタイミングや市場のトレンドによっては体感と離れた計算結果になる可能性がある
- 年度が終わらないと計算できないので所得の見積もりや納税資金が用意しづらい
また、先ほどもお伝えしましたが、移動平均法と総平均法で得られる結果は1年間だけでみたら異なるものの、将来にわたっての損益額は一致します。
確定申告をするときに計算方法の届出を必ずしよう
確定申告を行うときには、移動平均法と総平均法のどちらを採用するのかについて税務署へ報告しなければなりません。届出の期限は確定申告と変わらず、2023年3月15日(水)です。
届出に使用する書類は、国税庁HPからダウンロードできます。項目に記入をしてから税務署に提出してください。
⚠ 届出に関する注意点
① 届出をしなかった場合
もし届出をしなかった場合は、自動的に「総平均法」という扱いになるため注意しましょう。
② 計算方法は3年間変更できない
計算方法は一度選択したら3年間は原則として変更できません。毎年利益が低い方に計算方法を変えようといったことはできないので、それぞれの特徴をきちんとおさえたうえで検討しましょう。
まとめ
今回は、確定申告で知っておくべき移動平均法と総平均法をご紹介しました。
本記事ではシンプルな例を挙げて説明しましたが、実際には売買だけでなく、ビットコインやイーサリアムなど異なる暗号資産同士の交換、ステーキングなどさまざまな取引を行っているケースが多いでしょう。
暗号資産の取引件数が多いほど計算は複雑になり、エクセルやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトを使って計算するのは非常に難易度が高いです。
そのため、費用をかけて税理士に計算を依頼したり、損益計算を自動で行うツールを利用することが一般的になっています。
暗号資産の損益計算ツール「Gtax」では移動平均法と総平均法の両方に対応しており、LINE BITMAXでの取引履歴にも対応しています。取引履歴をアップロードすれば自動で計算が完了するので、難しい知識は必要ありません。
手軽に利益額の計算を済ませたい方は税理士へ依頼するか、計算ツールを活用することをおすすめします。
第1回:暗号資産にかかる税金の基本
第2回:暗号資産の確定申告の流れ
第3回:暗号資産の損益計算~移動平均法・総平均法とは~
第4回:暗号資産の損益計算が難しいと言われるのはなぜ?正しく計算を行う方法を紹介
第5回:いくらから申告が必要?暗号資産の税金に関するよくある質問
本記事は執筆者の見解です。本記事の内容に関するお問い合わせは、株式会社Aerial Partners(https://www.aerial-p.com/)までお願いいたします。
執筆者:藤村大生
株式会社Aerial Partners
ビジネス開発部長
税理士・公認会計士
株式会社Aerial Partnersにて暗号資産投資家の確定申告サポート、暗号資産事業者に対する経理支援を行っており、暗号資産会計・税務の知見が深い。監査法人出身でデューデリジェンス、原価計算導入コンサルなどの業務を中心に従事。また、証券会社の監査チームの主査として、分別管理に関する検証業務を牽引。
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